物販の実務
仕入値の上限は「売れそうな値段 − 経費」ではありません
2026-10-01
店頭やネットで「これは売れる」と思った商品がある。問題は、いくらまでなら買っていいかです。
よくある考え方は「売れそうな値段から、手数料と送料を引いた残りより安ければOK」。これは赤字にならない線ではありますが、利益が1円も残らない線でもあります。仕入れの判断に使う線ではありません。
先に式を置く
想定売価を P、販売手数料率を r、固定手数料を f、送料と梱包費の合計を S、目標利益率(売価に対する利益の割合)を m とします。仕入値の上限 X は
X = P × (1 − r − m) − S − f
m = 0 にすると、利益ゼロ=赤字にならないぎりぎりの仕入値になります。
メルカリで具体的に
- 想定売価 2,980円
- 販売手数料 10%(メルカリ)
- 送料 210円(ネコポス)+ 梱包費 30円 = 240円
- 目標利益率 20%
| 線 | 計算 | 仕入上限 |
|---|---|---|
| 赤字にならない線 | 2,980 × 0.9 − 240 | 2,442円 |
| 利益率20%を残す線 | 2,980 × 0.7 − 240 | 1,846円 |
検算します。1,846円で仕入れて2,980円で売ると、手数料298円、送料と梱包240円、利益は 2,980 − 298 − 240 − 1,846 = 596円。596 ÷ 2,980 = 20.0%。合っています。
「2,442円までなら大丈夫」と考えて2,000円で仕入れると、利益は442円、利益率は14.8%です。赤字ではありませんが、狙っていた線には届いていません。上限は「赤字にならない線」ではなく「残したい利益を残せる線」で持つ、というのがこの記事の要点です。
端数は切り捨てる
仕入上限は切り捨てです。売価の下限(損益分岐点の売価)は切り上げでしたが、向きが逆になります。上限を切り上げると、1円ぶん目標を割り込みます。
販路が変わると、上限も変わる
同じ商品を同じ2,980円で売る場合、利益率20%を残せる仕入上限は販路ごとにこう違います(送料・梱包 240円は共通)。
| 販路 | 手数料 | 計算 | 仕入上限 |
|---|---|---|---|
| Yahoo!フリマ | 5% | 2,980 × 0.75 − 240 | 1,995円 |
| BASE | 6.6% + 40円 | 2,980 × 0.734 − 240 − 40 | 1,907円 |
| メルカリ | 10% | 2,980 × 0.70 − 240 | 1,846円 |
最大で149円の差です。「どこで売るか」が決まっていないと、仕入上限は1本に決まりません。売れる速さも違うので、率の安さだけでは選べません(7販路の手数料比較)。
Yahoo!フリマの5%、BASEのスタンダードプラン(決済手数料3.6%+40円+サービス利用料3%)は2026年10月1日時点の公開情報です。手数料は改定されるので、計算に入れる率は必ずご自身の適用条件で確認してください。Amazonはカテゴリ別に率が違い、FBAを使えば配送代行手数料も乗るので、この表には入れていません。
送料のずれは、仕入上限に1対1で効く
ネコポスで送るつもりが、梱包したら厚さ3cmを超えて宅急便コンパクト(専用BOX込み520円)になったとします。送料・梱包は 240円 → 550円。
2,980 × 0.7 − 550 = 1,536円
仕入上限は 1,846円 → 1,536円、ちょうど310円下がります。
厚さ3cmの壁では、同じ310円の送料増で、売価の下限が345円上がると書きました。売価側では手数料のぶん増幅されますが、仕入側には増えた送料がそのまま効く。どちらから見ても、規格ぎりぎりの商品は「一段上の発送方法でも合うか」で仕入れを判断しておくのが安全です。
売価の見込みが外れたとき
仕入上限の式でいちばん不確かなのは、送料でも手数料率でもなく 想定売価 P です。
想定2,980円の商品が、実際には300円下げた2,680円でしか売れなかったとします。
2,680 × 0.7 − 240 = 1,636円
売価が300円ずれると、利益率20%を残せる仕入上限は 210円(=300円 × 0.7)動きます。逆に言えば、1,846円で仕入れたあとに2,680円でしか売れなければ、利益率は20%を割ります(実際に計算すると 2,680 − 268 − 240 − 1,846 = 326円、12.2%)。
想定売価は「いま出品されている最安値」ではなく、直近に実際に売れた値段で置いてください。出品中の価格は売れ残っている価格でもあるので、高めに出ます。
仕入時にかかったお金も原価に入れる
上の式の X は「商品そのものに払える額」です。仕入れのために払った送料・振込手数料・交通費があるなら、それは X から先に引いておきます。仕入上限1,846円の商品を送料込みで1,846円で買えたなら合格、本体1,846円+送料500円なら不合格です。
仕入れたあとは、売価側の線で管理する
ここまでは「いくらで買うか」の話でした。買ったあとは向きが逆になって、「いくらまで下げていいか」「何日止まったら値下げするか」を在庫1件ずつ持っておく必要があります。
1件なら電卓で足ります。出品中の在庫が数十件になると、仕入単価・販路・送料を入れれば損益分岐点の売価と目標利益率を残す売価を全件自動で出すシートのほうが楽です。手数料率と固定手数料は設定シートで書き換えられるので、改定が来ても1か所直すだけで済みます。