物販の実務
物販の確定申告でいちばん多い間違いは「期末商品棚卸高」です
2026-09-13
物販を始めて最初の確定申告で、ほぼ全員がつまずくところがあります。期末商品棚卸高です。
freeeやマネーフォワードを使っていても、ここだけは自分で数字を入れないといけません。そして、空欄のままにしたり、0円で出してしまう人が非常に多い。
結論から言うと、これをやると所得を過少に申告することになります。あとから指摘されれば、修正申告と延滞税がついてきます。
なぜ在庫が経費にならないのか
直感に反する話なので、丁寧に説明します。
12月に10万円分の商品を仕入れたとします。まだ1つも売れていません。この10万円は、今年の経費になるでしょうか。
なりません。
経費になるのは「売れた分の仕入代金」だけです。これを売上原価と呼びます。売れ残っている在庫は、経費ではなく資産として翌年に繰り越されます。
計算式はこうなっています。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期の仕入金額 - 期末商品棚卸高
期末商品棚卸高、つまり12月31日時点で売れ残っている在庫の金額を差し引く。これを0円にしてしまうと、仕入金額がまるごと経費になってしまいます。
つまり「経費が多すぎる = 所得が少なすぎる」申告になる。節税になっているように見えて、実際には誤りです。
具体的な数字で見る
今年こうだったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上 | 214,000円 |
| 仕入(原価合計) | 288,000円 |
| 期首商品棚卸高 | 0円(初年度) |
| 期末商品棚卸高 | 21,000円 |
棚卸を忘れた場合。 仕入288,000円をまるごと経費にすると、
214,000 - 288,000 = △74,000円
74,000円の赤字、という申告になります。
正しく計算した場合。 売上原価は
0 + 288,000 - 21,000 = 267,000円
なので、
214,000 - 267,000 = △53,000円
53,000円の赤字です。
赤字額が21,000円ぶん小さくなりました。差額は期末在庫の金額そのものです。これが「在庫は経費ではなく資産」ということの意味です。
逆に黒字の年は、棚卸を正しくやるほど所得が増えます。だから面倒でも、ごまかさずにやる必要があります。
在庫の金額はどうやって決めるのか
同じ商品を、1個1,000円のときと1個1,200円のときに仕入れていたら、在庫の単価はいくらで計算すればいいのか。
個人事業主の場合、何も届け出をしていなければ最終仕入原価法になります。これは法律で定められた評価方法(法定評価方法)です。
最終仕入原価法とは、その年の最後に仕入れたときの単価を使う方法です。
- 1月 1個1,000円で10個仕入れ
- 3月 1個1,200円で5個仕入れ
- → 最後の仕入単価は 1,200円
年末の在庫が10個なら、10個 × 1,200円 = 12,000円。これが期末商品棚卸高になります。
総平均法や移動平均法など他の方法を使いたい場合は、「棚卸資産の評価方法の届出書」を事前に提出する必要があります。出していないなら、最終仕入原価法で計算してください。
12月31日にやること
やることは3つだけです。
- 手元に残っている商品を、SKU(商品ごとの管理番号)単位で数える
- それぞれの「最後に仕入れたときの単価」を調べる
- 数量 × 単価 を全部足す
問題は2番です。1年分の仕入記録から、商品ごとの最終仕入単価を探す作業。販路がメルカリとAmazonとヤフオクに分かれていて、仕入先も複数あると、この作業だけで丸一日消えます。
だから12月31日にまとめてやろうとすると破綻します。仕入れた時点で記録しておく以外に、現実的な方法はありません。
ついでに知っておくべきこと
副業なら年20万円。 給与所得者の場合、給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は別途必要です。「20万円以下なら何もしなくていい」ではありません。
青色申告特別控除は事前申請。 最大65万円の控除を受けるには、その年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を出しておく必要があります。確定申告の時期に思い立っても、その年分には間に合いません。
手数料は経費になる。 メルカリの販売手数料10%、送料、梱包材、これらは全部経費です。支払手数料・荷造運賃として計上できます。意外と積み上がるので必ず記録してください。
手数料を引いたら本当にいくら残るのか
棚卸の話をしましたが、そもそも1件ごとの採算が合っていないと意味がありません。販路によって手数料率はまったく違います。
| 販路 | 販売手数料 |
|---|---|
| メルカリ | 10% |
| ラクマ | 4.5〜10%(前月実績により 10/9/8/7/6/4.5% の6段階) |
| ヤフオク | 10%(2024年6月4日から会員種別を問わず一律) |
| Yahoo!フリマ | 5% |
| Amazon | カテゴリ別に概ね5〜15.4%(メディア等はカテゴリー成約料が別途) |
| BASE | 6.6% + 40円/件(決済3.6%+40円 + サービス利用料3%) |
| STORES | 5.5%〜(フリープラン) |
売価3,980円・仕入1,200円・送料210円・梱包50円の商品で計算すると、
- メルカリ 手数料398円 → 粗利 2,122円
- Yahoo!フリマ 手数料199円 → 粗利 2,321円
同じ商品を同じ値段で売って、199円の差が出ます。月100個売れば約2万円の差です。
この計算を全販路まとめてできる計算機を無料で公開しています。手数料率は自分の契約条件に書き換えられます。
なお、2026年4月1日にAmazonの販売手数料率が改定されました(1点750円を超える商品で全カテゴリ一律+0.4%)。 2024年6月4日にはヤフオクの落札システム利用料が、会員種別を問わず一律10%に改定されています。手数料率を固定で覚えているツールや記事は、この日から間違った数字を出しています。自分で数値を更新できるものを使ったほうが安全です。
最後に
この記事は記録と計算の考え方をまとめたものであり、税務上の助言ではありません。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
特に、事業所得になるか雑所得になるかの判定、家事按分、消費税の課税事業者判定あたりは、状況によって答えが変わります。迷ったら税務署に電話して聞くのが一番早いです。無料です。